12月研修会「気象の基礎」よりピックアップ
くしろ山岳会の12月研修会は『気象の基礎』でした。気象について3回にわたって計画しており、最終的に天気図作成までおこないます。
1月『登山に役立つ気象の知識』
2月『ラジオを聴いて天気図を書く』
「道迷い遭難」と並んで多いのが「気象遭難」です。
でも、気象の勉強はハードルが高いですよね。
ましてやスマホで簡単に天気予報が見られる時代ですから、自分で天気を判断する必要性は感じないかもしれません。
実はそれが落とし穴。平地の天気予報をそのまま山に当てはめてはいけません。
気象に関する知識を習得するには時間がかかります。
くしろ山岳会では、初心者のうちから勉強して、いずれは山行中に空を観察して天気の変化を予測できるようになることを目指しています。
研修会のポイントを紹介します。
大気の対流
地球規模で大気はどこかで上昇してどこかで下降しています。
気象を考えるにあたり、このように大まかにとらえるとよいでしょう。
高気圧
周辺の空気:冷たく重い⇒下降気流⇒晴れる⇒気温上昇
中心から外側に向かって時計回り(北半球)に風
低気圧
周辺の空気:温かく軽い⇒上昇気流⇒空気は上空で膨張し冷える⇒雲が発生(結露と同じ)
中心に向かって反時計回り(北半球)に風
前線
温帯低気圧は気団の寒暖差がエネルギーです。温かい空気と冷たい空気がぶつかりあうので前線を伴うことが多いです。
温暖前線で雨が降る範囲はおおむね300キロで比較的シトシト降ります。一方寒冷前線は70キロの狭い範囲で強い雨となります。低気圧が東に進むときは、必ず低気圧よりも先に温暖前線が近づいてきます。
低気圧の速度が時速50キロとすると「札幌で雨が降り始めたら6時間後には釧路(300キロ東)で降る」という感覚をもつと良いでしょう。
温暖前線の断面をみると明らかに分かるように、天気は上空から崩れます。山に登っているときは、地上よりも天気の悪化が「早まる」と感覚的に捉えましょう。
雲の観察
上層の雲から低い雲まであります。
上空の巻雲(けんうん)は氷の粒でできており、薄いため白く美しく見えます。
乱層雲のような雨雲は、低い雲で黒く見えます。黒く見えるのは雲が厚く光を通さないためです。けっして黒い色というわけではありません。
雲の『変化』をみることが重要です。特に山では絶えず変化しています。
山風、谷風(海風)
風は『冷たいところ』⇒『暖かいところ』へ吹くと感覚的に覚えましょう。
冷たいところは空気密度が高く、高気圧のようになるからです。
山(内陸)は昼夜の寒暖差が大きく、海は寒暖差が小さいです。
日中は谷風(海風)が吹きます。山(内陸)の温度が上昇し相対的に海の温度が低いからです。
夜間は山風が吹きます。山(内陸)の温度が下がり相対的に海の温度が高いからです。
この関係が逆転したり乱れたときは、天気が悪化する兆候です。
音の伝わりかた
遠くの音がきこえると天気悪化の兆候です。
水蒸気が空気に多くふくまれているためです。
音が空気を伝わる速度は秒速340m、水中では1500mです。
水の方が5倍早いので、空気中に水蒸気が多くなると音が伝わりやすくなります。
夕焼けの色
太陽の光が大気中を通過する距離が長くなり、波長の短い光が散乱され、波長の長い赤い光だけが私たちに届くことから「夕焼け」になります。
もしも空気中の水蒸気が多いと、波長の短い光がさらに散乱されるので、夕焼けの色は不気味な色(紫に近い)になります。人によっては黒みがかるともいいます。
観察の経験を重ね、「普段とは何か違う」ということに気づくことが大切です。
次回1月の研修会『登山に役立つ気象の知識』では、山の天気事例をもとに皆さんで検証していきたいと思います。
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