8月研修会「脱水と水分摂取」よりピックアップ

くしろ山岳会の8月研修会では、「脱水と水分摂取」について学びました。

研修会の内容から、「山にはどのくらいの量の水を持っていくといいか」重要ポイントをピックアップしてお伝えします。

 

水分補給

「水が足りなくなってバテた」経験はありませんか。

登山では、エネルギー代謝が高まるため、膨大な熱が生み出されます。

体温を下げるもっとも効果的な方法は「汗をかくこと」ですが、失われた水分を補給できずにいると脱水が起こります。

脱水は熱中症の入口。

いったん山に入れば、すぐに医療機関に駆け込むことができませんから、なるべく早い段階で気付いて水分補給することが重要なのです。

 


のどの渇きを覚えたら、軽い脱水状態


のどが渇く、大量の汗がでる。

こんな症状が出たら、軽い脱水状態になっているサインです。

一般的には、体重の2%の水分が失われると脱水とされています。

この段階では、登山では持久能力が5~10%落ち、ペースが落ちて集団から遅れるようになります。

 


どのくらい補給するといいのか?


どのくらいの量を水分補給するといいのか、レベル別に示した水分補給の指針がこちら。

 

◆行動中の水分補給量(ml)の算出方法

  下界でのスポーツや運動の場合 登山での場合 脱水の許容範囲 行動中の水分補給量(ml)を求める式
レベル1 健康のために運動やスポーツをする人 健康のために登山をする人、初心者、中高年、子供、体力の弱い人 体重の1%まで 体重(kg)×時間(h)×5

-10×体重(kg)

レベル2 一般的なスポーツ選手 十分な体力と経験を身につけている登山者 体重の2%まで 体重(kg)×時間(h)×5

-20×体重(kg)

レベル3 長距離走選手のように持久力のトレーニングを十分に積んだ人 アルパインクライマーやトレイルランナーなど、ハードな登山に慣れた人 体重の3%まで 体重(kg)×時間(h)×5

-30×体重(kg)

レベル4 遭難時など、やむを得ず水分が制限される場合 体重の5%まで 体重(kg)×時間(h)×5

-50×体重(kg)

「登山の運動生理学とトレーニング学」山本正嘉より

一般的な登山者は、体重の1%までの脱水を許容範囲として考えます。

 

体重60kgの人を例に、くしろ近郊の山で補給する水の量を算出してみます。

  時間 脱水量 補給量
西別岳 往復2時間40分

+休憩25分

60kg×3.08h×5=924ml 924ml-10×60kg=324ml
雌阿寒岳(野中温泉コース) 往復3時間10分

+休憩30分

60kg×3.66h×5=1,098ml 1,098ml-10×60kg=498ml
雄阿寒岳 往復5時間30分

+休憩55分

60kg×6.41h×5=1,923ml 1,923ml-10×60kg=1,323ml

西別岳、雌阿寒岳は、500mlのペットボトル1本ほど。

雄阿寒岳は3本ほど補給する計算です。

 

水分補給

ただし、出てきた数字はあくまでも「目安」ですから、最低限このくらいの量は持っていく、と考えておくといいでしょう。

天候や体力、歩くペース、汗をかきやすいかどうか体質によっても大きく変化します。

たとえば気温が高いとき(25度以上の夏日など)には、脱水量の係数は6~8にする必要があるかもしれません。

計算してみた結果「そんなにたくさんは重くてムリ」なら、その山(コース)は「体力に見合ったレベル」ではないと言うこともできます。

 

ここまで、くしろ山岳会8月研修会「脱水と水分摂取」から、山に持っていく水の量に焦点を絞って紹介しました。

少なければ熱中症などを起こして遭難事故につながりかねず、多すぎても装備が重くてバテる原因になります。

山行をより快適にするための指針のひとつとして、ぜひ取り入れてみてください。

 

次回8月の研修会は「低体温症」です。北海道の夏山遭難でよく聞く「低体温症」について、症状や予防策を学びます。 


 

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