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9月研修会「低体温症」よりピックアップ

 

くしろ山岳会の9月研修会は「低体温症」でした。

低体温症による遭難事故といえば冬のイメージが強いですが、実際には、春~秋の夏山シーズンに起こるほうがはるかに多いことをご存じでしたか?

研修内容から、参加者の驚きが大きかった「低体温症を防ぐにはエネルギー補給が重要」に焦点を絞ってお伝えします。

 

防風防寒対策 雨具着用

 


低体温症とは


低体温症とは、通常37度程度に保たれている体の深部体温が、35度以下になった状態をいいます。死亡率は20~90%に及ぶ重篤な状態です。

外気温が下がると、皮膚の血管は収縮して体外へ熱を逃がさないようにしたり、震えによって熱を生産するなどの防御反応を起こします。

持ち直すことができないと、どんどん体温が奪われていき、やがて脳の働きが鈍って防御反応もうまくできなくなります。

自分が低体温症になっていることさえわからなくなって、防寒着を着たり、食べ物を口にすることもできず、最悪は死に至ります。

 

 


熱を作りだすためにエネルギー補給が重要


低体温症の特徴的な症状に「震え」があります。

外気温が下がると、皮膚の血管は収縮して体外に熱を逃がさないようにします。それでも寒いと、震えによって自分で熱を作り体温を保とうとします。

震えは、骨格筋を激しく収縮することで、安静時の約5倍の熱を生み出すことが可能です。(5メッツの運動に相当:ソフトボール、テニス)

ところが、エネルギー不足だとそれさえできなくなってしまうのです。

 

 


2009年7月トムラウシ山大量遭難事故


2009年7月16日、トムラウシ山で起きたガイドを含む登山者8名が低体温症で死亡した遭難事故は、まだ記憶に新しいでしょう。

前日の雨で装備が濡れていたことに加え、当日も雨に降られ、一桁台の気温の中、風速20m前後の立っていられないほどの暴風の中を歩き、低体温症を引き起こしました。

 

事故の検証では

疲労と低カロリーの食事によるエネルギー不足も、低体温症の進行に拍車をかけた

と指摘されています。

 

事故当日、ツアー一行が歩いていた時間帯の風は、平均で風速15~18 m/s、最大風速はしばしば20m/sを超えていたと考えられます。

風速15~18 m/sに逆らって歩くと、無風時の約2倍のエネルギーを消費します。

また、ツアーは各自で食事を準備する内容だったため、装備の軽量化を優先し、インスタント食品などの簡易な食事で済ましていた登山者が多かったことも分かっています。

疲労に加えて、熱を作りだすカロリーが不足して、低体温症の進行に拍車をかけたわけです。

 

 


悪天候時はいつもより多くエネルギーを補給する


悪天候時は通常より1~2割程度多くエネルギーを摂取します。

 

体重60kgの人が8時間登山した場合

【通  常】:60kg×8h×5=2,400kcal

【悪天候時】:60kg×8h×5×1.2=2,880kcal

【その差】 :480kcal(コンビニおにぎり3個分相当)

 

熱を作る場所は筋肉です。燃料として、糖質(炭水化物)、脂肪、タンパク質が必要になります。

なかでもカギとなるのは糖質で、「即効性のある飴やチョコレートなどの糖類」と、「ゆっくり消化されてエネルギーになるおにぎりや餅などのデンプン類」を組み合わせて補給し、熱を出し続けることが重要になってきます。

極度に疲労して何も口にできないときは、体内への吸収が早いブドウ糖がいいでしょう。

 

ここまで、くしろ山岳会9月研修会「低体温症」から、「低体温症を防ぐにはエネルギー補給が重要」を紹介しました。

これからは「冷たい雨」が怖い季節です。

「雨や自分の汗による濡れや蒸れ」対策、防風、防寒対策もしっかりしてお出かけください。

 

参考:「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」羽根田治、飯田肇、金田正樹、山本正嘉 山と渓谷社
   「トムラウシ山遭難事故調査報告書」トムラウシ山遭難事故調査特別委員会
           「登山の運動生理学とトレーニング学」山本正嘉 東京新聞
           「登山外来へようこそ」大城和恵、角川新書

 

次回10月の研修会は「スマホ地図アプリ」です。

今や標準装備となったスマホをどう登山に活用するか、ベストな方法を探ります。


 

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